〜「 虚 実 」〜
瀬戸塾師範 瀬戸謙介「虚」と「実」とは表裏一体であり、虚とは実体のない空のことを指します。虚でもって相手を誘い込み、実でもって相手を倒す。是が虚実の駆け引きです。 |
試合の時など実と実、力と力でぶつかり合い、技でなく力で相手をねじ伏せている者がいますが、これなどは昔から猪武者とからかわれ最も下手なやり方とされています。また、このような者は、自分より強い実を持った者に対しては、今迄のこけおどしの実が通用せず、どうして良いのか解らなくなり、まるで別人のように萎縮してしまい手も足も出なくなってしまいます。 勝負とは虚実の駆け引きであり、勝負に勝つには実を避け相手の弱点を攻めるか、あるいは虚をもって誘い実で攻撃するかです。 武術とは、「柔能く剛を制す」と言われるように、如何に少ない力で相手を的確に倒すかの研究であり、いかに相手の弱点を見つけ、そこを効果的に攻め、いかに勝ちを得るかと言う事の追求です。いかに強い人、達人でも、構えに一分の隙が無いように見えても必ず付け入る「隙」すなわち弱点はあります。それが、肉体的、技術的、あるいは精神的と人によってそれぞれ異なりますが、それを見極める事がたいせつです。 実を攻める場合には、精神的にも、肉体的にも、技術的にも相手より上回っていなければなりませんし、失敗した時のダメージも大きいです。しかし、虚を攻める場合、実を攻めるときの半分以下の力でも相手を破ることが出来ます。 虚実の駆け引きには、「虚を実と見せかけて攻撃する方法」例えば、刻み突きを出すと見せかけて前蹴りで決める。あるいは、「相手の実を崩し虚をつくり出し、そこを攻撃する方法」例えば、足払いなどをし、相手の体勢を崩してから決めるなど技による虚実の駆け引きから始まり、心と心、気と気の駆け引きなど虚実の駆け引きには千差万別、奥が深く研究すればするほど難しいものですが、相手と対峙し読みが当たり技が決まった瞬間などは実に愉快です。 虚実の駆け引きとは、いかに相手の隙を見つけるか、あるいは守りが堅くてなかなか隙が見いだせない時には、さまざまな駆け引きを用いて守りを崩し、隙を作らせることです。 隙とは、構えの崩れから生じる攻撃のチャンスです。隙には、形の隙と心の隙とがあり、隙を作るには、相手の構えている形を崩すか、心を崩すか、あるいはその両方を崩すかです。 構えの形を崩すには、足払いとか、攻撃をさせるとか、とにかく相手を動かすことであり、動かすことによって隙が生まれてきます。 心を崩すには、相手の心を迷わせることです。驚き、恐れ、疑い、戸惑いなどを起こさせ、意表を突くことも大切です。 虚実の駆け引きも、心と心の駆け引きであり、最後には策術を用いなくても自然と相手の心の中に入り込み知らず知らずの内に勝ちに導くようになるよう修行すべきです。 |
瀬戸塾新聞22号掲載記事(2006,2) |
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