〜「攻撃のチャンス」〜
瀬戸塾師範 瀬戸謙介 攻撃をするには、その突くべきとき、蹴るべきときが解らなくては攻撃は出来ません。ただガムシャラに出ていったのでは相手のよき餌食となってしまいます。 相手の動きを見破った方が攻撃のチャンスをものにする事が出来るのです。相手の動きを見破るとは、攻防渡り合う前の虚実の駆け引きなどでいかに相手の心と気の動きを捉え、それをいかに料理するかというところから始まります。 攻撃のチャンスがチャンスとなるのは、攻撃の動きが伴ったとき、あるいはふとした気のたるみが生じた時です。その一瞬を見過ごしたのちはもはやチャンスではなくなっています。一試合の内には、2度あるいは3度ぐらいは必ず攻撃のチャンスは有るものです。そのチャンスを見過ごすようでは勝つことは出来ません。また、チャンスだと思ってから攻撃したのでは手遅れです。チャンスと思った瞬間には無意識の内に体が動いて攻撃をしていなければいけません。 |
攻撃のチャンス |
1)相手が攻撃を仕掛けようとしたとき 攻撃をしようとした起こりを押さえる事です。これは相手の気が充実し、 まさに攻撃をしようとした一瞬、突きの「つ」、蹴りの「け」を感じたときが攻め込むチャンスです。「出合をとる」とはこのことを言っているのです。出合をとるには絶対に気後れをしてはいけません。相手の気を気でしっかりと捉え、その気を押し返すぐらいな気迫が必要です。 2)迷っているとき 驚き、恐れ、疑い、迷い、などを抱き相手の心が定まっていないとき。このように心が迷っているときは気が充実しておりません。したがって動きに精彩が無く、反応が鈍くなっているのでこちらから攻め込むチャンスです。相手の気が整わない内に果敢に攻撃をすべきです。ただし、こちらの気が上擦り慌てた攻撃等をすれば、逆に相手に気を落ち着かせる結果と成る場合があります。相手が迷っていると感じた時には、さまざまな虚の技を繰り出し、ますます混乱させ、その混乱に乗じて攻撃するのが良い方法です。 3)気が抜けたとき 緊張の持続というものはなかなか難しいものです。「ホット」した瞬間、一瞬の気のたるみ、そこを攻撃されると体自体が相手の動きに対して即応出来ないものです。 4)気が急いているとき 気が走りすぎて自分のペースだけで、相手のことが見えず攻撃がうわずっているとき。このように相手の気が急いているときには相手のペースにはまらず、じっくりと相手の動きを見、動きの乱れたところに付け入ることが大切です。やもすると、相手の動きにほんろうされ自分のペースが乱れて互いにドタバタといった組手になりがちですが決して相手のペースにはまらないことが肝要です。 攻撃はしっかりと腰を落とし気で相手を押さえつける様にしながら鋭い攻撃技を繰り出すようにしなければいけません。自分が絶好調なはずなのに技が決まらず、何だかばたばたして上手く行かないことがあります。これなどは気がはやり過ぎて、自分が見えない状態になっているときです。 5)攻撃の技が止まったとき 一の技、二の技と攻撃を仕掛けてき、その技をことごとく防がれ、かわされ次の出す技に迷いが生じ、一瞬のためらいが起こり技が止まったときそのときが反撃のチャンスです。 6)後ろに下がろうとしたとき こちらの攻撃に対して、相手が下がって捌こうとしたとき。こちらが攻撃を仕掛けようとしたとき既に逃げの体制に入っているので逃げ足のタイミングを一瞬ずらさせる。足払いなどが有効ですが足払いをしたときには既に攻撃の態勢に入っていなければ攻撃のタイミングがいってんぽ遅れ、攻撃のチャンスを逃します。 宮本武蔵は立ち会ったときの心掛けとして「兵法三十五箇条」に次のように記しております。 一,縁のあたりと云うこと。 縁のあたりと云ふは、敵太刀切懸るあい近き時は、我太刀にてはる事も在り、請る事も在り、あたる事も在り、請も、はるも、あたるも、敵を打太刀の縁とおもうべし。乗るも、はづすも、つくも、皆うたんためなれば、我身も太刀も、常に打たる心也。能々吟味すべし。 つまり、攻撃のチャンスとは、全てが敵を打つチャンスであり、とくにこの場合とかあの時とか言う必要はなく、すべての場合、すべての動きが敵を切る為の手段であり、すべてがチャンスであり、勝ち場である。心構えは、常に敵を切る所に置かなければ攻撃のチャンスなどつかむ事など出来ない。と言っています。 前々回の瀬戸塾新聞に掲載しました「三つの先」を参考にしながら読んで頂くとより理解出来ると思います。 |
瀬戸塾新聞19号掲載記事 |