〜「構え」〜
瀬戸塾師範 瀬戸謙介 構えとは、守りに強く、攻める時は素早く、姿勢を正しく保ち心を落ち着かせる。これが構えの目的です。 構えには相手に対して一歩も踏み込ませないぞと脇をしっかりと固め一部の隙も見せない「実」の構えと、相手に隙を見せ攻撃を誘い出す「虚」の構えとがあります。 構えを型ちだけに拘ると固くなり動きが鈍くなり、相手に勝ことばかりに気が急くと構えが崩れてしまいます。 自分の置かれている状況を的確に判断し、心と気を充実させた内なる構えが外に形となって現れ一つの構えを作り出します。 およそ日本の「〇〇道」と名の付く稽古ごとをしている人でそれぞれの道で名を馳せ、達人と言われている人達の立ち居振る舞いには寸分の隙も有りません。全ての動きが構えであり、構えから次の構えとよどみなく流れているからです。 空手もそうですがあらゆる武術に置いて本物か偽物化の判断の基準はよどみなく連続的に技が出せ、動きが安定していて隙があるかないかで見分ける事が出来ます。基本一本組手や自由一本組手のような単発のものはごまかしがききますが、隙が無く、無駄な動きが無く連続技を繰り出すには相当な修行を積んだ者でなければこなす事が出来ません。 |
正しい構えとは |
構えとは、型があって型が無くその場その場に置いて如何に一番有利な場に自分の身を置くかと言う事です。その時の姿勢は自分にとって一番落ち着き、相手がよく見え、瞬時に攻撃あるいは身をかわす事の出来る形ちです。 構えると言う事は身を固くする事ではなく、構えをつくる事で心が落ち着き物事がよく見え、気を自由に解き放つ事が出来る状態を作り出す事です。自分の能力を最大限に発揮するする為に行う行為です。ですから構えにはこれが最良の構えだと言った形ちは有りません。その日の体調、精神状態など様々な要素によって構えは変わってきます。脇を絞ってしっかりと身を固める構え、前の手を高く揚げわざと隙を見せ相手の攻撃を誘う構え、フットワークを使って相手の気を散らす構えなど十人十色、様々な構えがあります。 空手における構えの目的は一つ、それら全て「如何に相手を倒すか」です。受ける、さばくなどにこだわっていたのでは相手を倒す事など到底出来ません。(注1)教わった全ての技は、相手を倒す為の手段であると思わなければ勝ちを得る事などあり得ません。構えた時には如何に相手を倒すかと言う一点に身も気も集中すべきです。 |
構えの目的 |
構えは、相手との関係、力量などの状態によって変化します。どのように構えが変化しようとも、構えの目的は相手にとって攻撃しにくく、自分が最も攻撃しやすい所に身を置くと言う事です。 連盟の試合で両手を下に垂らした構えをすると「無防備」の反則を取られます。しかしこれなどは私にとって信じられない試合規約です。元々無防備と言う反則項目が有る事自体が不思議でなりません。 相手と対峙した時に如何に相手の隙を衝くかと言う事に専念する訳ですがその「隙」とは無防備な所です。そこに隙が無ければ相手の体勢を崩し無防備に成った所を攻撃します。無防備を装って相手を誘い込む。この構えを「虚」の構えと言います。外見上、姿、形は虚に見えても、内なる構えは「実」なのです。こういった駆け引き「何が虚であって何が実であるか」を学ぶことも大切な事です。 (注1)受け、さばきなど相手と対峙した時に考えていたのでは攻撃された時に、そこでイッテンポ遅れ受けばかりに回り、追い込まれ反撃をするチャンスをなかなか掴む事が出来ません。日頃十分な稽古を積んでおれば受けやさばきなど考えなくても無意識の内に体が反応するものです。それよりも、常に相手を倒すと言った気迫を持って挑まなければ相手に気後れをしてしまい充分な技を繰り出す事が出来なくなってしまいます。 |
瀬戸塾新聞19号掲載記事 |