第九回 論語勉強会

瀬戸塾師範 瀬戸謙介

 
(原文)
  子曰、質勝文則野、文勝質則史、
  文質彬彬、然後君子、



(書き下し文)
子曰わく、質(しつ)、文(ぶん)に勝てば則(すなわ)ち野(や)
文、質に勝てば則ち史(し)
文質(ぶんしつ)(ひん)(ぴん)として、然(しか)る後(のち)君子(くんし)
                                  雍也(ようや)

  
( 解釈 )
 「本能が知識に勝るならば、それは野蛮人である。知識が本能に勝るのであればそれは見栄っ張りな嫌味な人間になる。知識と本能とが相交わって上手く調和して、初めて君子といえる。」
「質」 田舎、卑しい、飾らない、粗野で野性的な人。 
「文」 文化 「文節」の文で、言葉を飾り立てる、の意味。
「史」 朝廷の文書を司る役人のことで公文書に外面的な修飾(つくろいかざること)を施す事を務めとしている。
「彬彬」(ひんぴん) 外形と実質とが共に備わるさま。色などが上手く調和しているさま。
 「人間は外面と内容とが釣り合っていなければ、立派な人物といえません。いかに内面が誠実な心の持ち主でも、外面に表れた言動が乱暴で礼儀知らずであったならば、それはただ単なる粗野な人間にすぎません。
 反対に勉強ばかりしていて、人間としての精神を鍛えるのを怠ったならば小手先ばかりの猿知恵が身に付き、言葉によって外面をうまくとりつくろうようになります。これはちょうど分厚く一見素晴らしく見えるが本筋はオブラートに包んだように見えにくくし、内容が無く美辞麗句ばかりをつらねて書かれている役人の報告書と同じである。「巧言令色鮮し仁」とはまさにこのことを言っているのです。
 だから人は文(知識)も質(精神)も両方とも鍛えバランスよくそなえた人物、そういった人をはじめて君子と呼ぶことができる。」
 今、「亀田三兄弟」というボクシングで話題の人物がおります。「五月五日は亀田の日」とばかりにテレビ局が大々的に宣伝し、当日小池環境大臣や芸能人たちがまるでアカデミー賞授賞式のように着飾ってタイトル戦を観戦に来ているニュースを見ました。
 皆さんは亀田三兄弟のインタビューを聞いて何時もどのように感じますか?彼らの態度を見ていて格好良いと思いますか?亀田三兄弟、特にその父親を見て品が良いと思いますか?皆さんはこの兄弟に対して知性とか理性というものを感じ取ることが出来ますか。
 私の目には、無恥な人間の増長としか写りません。
 まず、言葉遣いが出来ていません。彼らは正しい日本語を話していません。彼らの行動は、傍若無人で礼儀をわきまえていない。人間よりも野生動物に近い振舞いです。しかしそれをまた格好いいとばかりに報道するメディアもメディアです。まさに、「質、文に勝てば則ち野」です。
 また、今ほど国民から政治が信頼されていない時代も珍しいと思います。それは口先だけで誤魔化し真実みの無い美辞麗句を並べ立て、何ら内容のない話ばかりする政治家が多いからです。これなどは、「文、質に勝てば則ち史」です。私はこの様な人間がもてはやされる世の中は世も末だと思っています。
 
 
 
 
 

 

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