~国家斉唱に思う~

瀬戸塾師範 瀬戸謙介

 2008年4月の初め、神奈川県空手道選手権大会の審判に行ったときのことです。
 開会式が始まり、「国歌斉唱、皆さんご起立の上国旗の方に向いてください」と場内アナウンスが流れました。何気なく観客席の方を見た私は我が目を疑いました。思想的?な考えで立たない人はどこの会場でも2~3人はいますが、ここ神奈川県大会の会場では三分の一以上の人が座ったまま雑談をしているのです。三脚にビデオをセットしているところを見ると間違いなく選手たちの父兄だと思われます。私はこの人たちは何のために自分の子供に空手を習わせているのか非常に疑問に思いました。空手協会の大会であり、また道場訓にも「礼儀を重んずる事」とうたっているのに、人間としての基本的礼儀をわきまえない連中がこの会場にはかくも多いことに愕然とさせられました。
 そして、場内アナウンスがもう一度起立をうながすのかと思いきや、そのままの状態で国歌が流れてきました。私はこの主催者の対応にもビックリしました。
 
 それから3週間後の4月29日に東京都大会がありました。「これより国家斉唱をおこないます。選手は回れ右して国旗の方を向いてください。場内でお座りの方はお立ちになり国旗の方に向いて、一小節前奏の後にご唱和願います」とアナウンスが流れました。神奈川県大会の件があるので果たしてどうなるか、もし立たない者がいた時にはもう一度放送を流して全員に立ってもらわなければと思いながら、場内を見回すと、全員起立、一人として座っている者はおらず、ホッとした気持になりました。
 しかしそれも束の間、前奏に引き続き国歌を歌い出したその時、横にいる小学生たちを見ると、国歌を歌わずにただボーっと立っています。
 後でその子たちに「なぜ国歌を歌わないのだ?」と聞くと「学校で習っていないから覚えていない」「えっ!学校で習っていないの?」すると或る子からは「一、二回習ったけど覚えていない」との答えが返ってきました。
 式典で国歌が流れたときに立たない者は論外としても、国歌を学校でちゃんと教えていない今の日本の教育にも憂慮を感じた一日でした。(国旗・国歌に関しては瀬戸塾新聞28号をお読み下さい)

 

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