推薦図書

   論 語

 
 「論語」は今から2500年前の思想家「孔子」の言葉を弟子達が孔子没後編集したものです。
論語は人格の形成をどのようにして行うかについて語った問答集です。論語の凄さは今から2500年もの大昔に人間としての生き方を説いた書物が当時と比べ全ての環境に於いて天と地ほどの異なる現代社会においていまだに生きた言葉として我々に語りかけ導く力を持っていると言うことです。そして論語ほど私達が意識するしないにかかわらず、日本人の思想形成に大きな影響をあたえてきた書物はありません。
 また、論語が人の心を捕らえる魅力の一つに散文詩としてのリズムの美しさがあります。論語を読む時には是非皆さんも声を出して読んでみて下さい。意味はよく解らなくても言葉の持っている独特のリズムに心が引きつけられます。江戸時代の子供達は八歳ぐらいから「論語」を習い始めました。この時の勉強方法は素読です。昔の子供だからと言って「言を察して色を見る」の意味がすぐに解った訳ではありません。声に出してそらんじているうちに独特のリズムが身に付き言葉の持つ素晴らしさを体で感じるようになります。「読書百遍意自ら通ず」です。 
 私が子供の頃、父はなにかにつけ論語の一節を引用して私に話しをしてくれました。意味はよく解らなくても子供心に父の口から発する言葉の美しさと力強さを感じ取り背筋がピシッと伸び、なんだか少し自分が高尚な人間に成ったような気分を味わったことを思い出します。
 今までに論語ほど多くの人々によって訳された本は有りません。江戸時代に既に千を越える論語の注訳本が発行されていました。今日、書店ではコミックと雑誌が主流だと言われていますがそういった中に於いても数多くの論語に関する著書を見いだす事が出来ます。私の手元にも 「論語」(吉川幸次郎訳) 「論語」(金谷治訳)「論語」(久米旺生訳) 「論語に親しむ」(今泉正顕著) 「人生は論語に窮まる」(谷沢永一、渡辺昇一著) 「論語入門」(阿部幸夫)など二十冊以上有ります。いずれを読んでもそれぞれ著者の解釈、人生観がそこにあり、なかなか味わい深いものがあります。しかしこれら全てを読むのは大変だと思いますのであえて皆さんに推薦するとしたら「論語」(金谷治訳) 「人生は論語に窮まる」(谷沢永一、渡辺昇一著)「論語について」(吉川幸次郎)を選んでみました。是非読んでみて下さい。

                           瀬戸謙介