推薦図書
義珍の拳
今野 敏 著 / 出版 集英社
空手の練習後は、いつもの赤提灯で喉を潤しながら空手談義に花を咲かせています。その席である会員から、「瀬戸先生の推薦図書はさらっと読めるのも有りますが、ほとんどの本が難しくて読むのが大変苦労する。もう少し読み易い本を紹介して頂ければ有り難いのですが」という意見を頂きました。確かに私が紹介した本の多くは小説や物語とは違い気楽に読むという訳にはいかないものが多いです。その理由は、暇つぶしの為の読書を紹介しているのではなく、自分を磨く為の本を紹介しているからです。自分を鍛え、磨くと言うことはハウツー本では決して学び取ることは出来ません。難しくとも挑戦し、そしてたゆまない努力が大切です。
今回紹介する「義珍の拳」は日本本土に空手を伝えた「船越義珍先生」の伝記です。伝記本ですからこの本はとても読みやすい本です。船越先生の空手との出会、本土に渡ってからの苦労そして日本空手協会設立までが書かれております。船越先生が最初に習った形「ナイファンチン」(鉄騎初段)。この形だけをひたすら三年間毎日毎日繰り返し練習し、やっと身に付くと次の形を2年間続けるといった練習だったそうです。この本を読むと一つのものを身に付けるには、近道はなく地道なたゆまない努力が本当の底力となっていくことがよく解ります。そして空手を広める為にいかに苦労したかがうかがわれます。今、世界の空手人口の七割を松涛館流が占めております。そのほとんどの道場の正面には船越先生の肖像画が飾られております。私も今までに世界各国、数十箇所の道場を訪れましたが、訪れた全ての道場に船越先生の肖像画が飾られておりました。船越先生は大変な苦労をしながら空手の普及に勉められましたがその努力が今や世界に花開いております。空手を志すものは是非この本を読んでみて下さい。
瀬戸 謙介