推薦図書 梅原猛の授業「道徳」 梅原猛 著 朝日新聞社出版 |
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最近やっと学校でも道徳教育に対して正面から取り組もうといった動きが出てきました。大変喜ばしい事だと思います。先日学校の先生から聞いた話ですが、先生方が教えるのに一番苦手な部門が「道徳の授業」だそうです。先生方もどのように授業を進めていって良いのかよく解らないそうです。 この本は、梅原猛氏が京都の洛南高校附属中学校で道徳の授業をした内容をまとめたものです。そう言った意味では本著は道徳教育現場の道しるべに成るのではと思います。 本著は神道、仏教、キリスト教などの思想体系を解りやすく説明し、人間本来の心の有り方を説いています。 梅原猛氏は、道徳の根源は自利利他にあると説いています。 自利とは、自分を磨き修行を積んで悟りを開こうとする欲望のことです。 利他とは 、人を救おうとする心です。そして利他の中でもっとも美しいのが母親の子供に対する愛情です。「母親が子供を愛するのは子供からお返しをもらうためではありません。子供が立派になり幸せになってくれれば母親は満足なんです。」この自利と利他を通じ道徳の大切さを多方面から説いています。 本著では道徳を宗教、特に仏教の面から説いているため、どうしても慈悲、仁、愛に重きを置いています。私は、道徳は仁の心をしっかりと身に付けるのも大切ですが、同時に正義感、気高さ、良心、恥の心、自分を律する心、悪に立ち向かっていく勇気等をを教える事も大切だと思っています。しかし本著ではそういった面があまり述べられていないのが残念です。これは授業の時間的制約のためだったのではと思います。いずれにしても人間の生き方を考えるのにあったて大変参考になる本だと思います。 |