Web書店Bk1の「堂々たる日本人」にリンクしています。
推薦図書
 

 堂々たる日本人   
      知られざる岩倉使節団

 泉三郎 著  
 
祥伝社黄金文庫 出版

 
 この本は明治4年、岩倉具視を特命全権大使として1年10ヶ月を掛けて世界を見聞した記録の本です。当時、アジアの国のほとんどが白人の植民地となり人種差別が当たり前の時代に、なぜ東洋の外れの小さな島国である日本の使節団が訪問先の国々でかくも歓迎されたのか、国の在り方を考えるに当たってとても参考になる本です。
 1871年(明治4年)廃藩置県が断行されまだ明治新政府の基盤がしっかりしないこの時期に岩倉具視を特命全権大使として木戸孝允、大久保利通、伊藤博文など明治政府の中心的人物、総勢46名が1年9ヶ月を掛けて世界を見聞しました。彼たちは新しい日本をどのような国の姿にするのが良いのか直に確かめるために世界12カ国、120を超える町や村を回覧し、政治、経済、軍事、外交、産業、貿易、宗教、教育、生活、風俗に致るまで実に貪欲に見学し研究してきました。おかげで明治の改革は理想を追いながらも現実を見誤らずに「日本の近代化」を進めることが出来たのです。 
 彼らは行く先々で巨大な西洋文明の隆盛さを見せつけられ驚嘆しながらも劣等感に苛まれる事はありませんでした。それは機械文化においては確かに西洋の方が進んでいるが、精神文化、道徳面においては日本の方が勝っているといった自負があったからです。
同行した久米邦武の東西文明比較論に
「欧米では成功者は真っ先に自分が快楽を追求してはばからない、むしろ富を誇示し、それを世間一般も認め羨望する傾向がある。ところが日本ではそうでない。殿様も家老も上に立つ者は『先憂後楽』が哲学で、民のことを先に考えてその上で自分が楽しむというのが常識である。これをリーダーの道徳として身に律するのが原則です。そのあたりが基本的に違う。」と書かれています。
 六本木ヒルズ、セレブとその生活のゴージャスさを誇り、快楽の追求をはばかることなくマスコミにアピールし、世間も羨望の眼差しで話題にする昨今、考えさせられます。
 著者和泉三郎氏も「現代は、当選だけが目当ての無定見な政治家、自己保身だけが関心事の無責任な官僚、数字だけを追いかけて一喜一憂している品のない経営者、節操のない軽薄子のマスコミ、迷惑かけまくりの礼儀知らずの若者たち、柔弱でなよなよした男たち、ノーテンキで破廉恥な女たち、現地で軽蔑され嫌われる日本人海外旅行者、いったい日本人はどうなってしまったのか。」と嘆き、是非この本を読んで明治の人たちの気概を学んで欲しいと訴えています。